「境界に咲く花々 ― イラストで紡ぐ物語」

イメージイラスト紹介

「花たちが語るのは、美と死、希望と絶望、そのすべてを抱えた人間の姿」

生と死のあわいに咲く花々。
美しく、儚く、ときに毒を秘めて――
その姿は、まるで人の心を映すかのよう。
ここでは、私の描いた花たちが語りかける物語をご紹介します。

泥水の底から茎を伸ばし、清らかな花を咲かせる蓮。
その姿は、どんな環境にあっても自らを濁らせず、ただ凛と咲き誇る「命」の象徴のよう。
泥に育まれながらも泥に染まらないという矛盾は、人の心の強さや儚さをも映し出す。
苦難の中でこそ輝く命の花。

鬼灯

赤く灯る鬼灯は、手を伸ばせば届きそうで決して掴めない夢や想いの象徴。
ふと誘うように揺れながら、近づけば遠ざかる。
その果実に触れた瞬間、すべてが幻のように崩れていくかもしれない。
まるで「浮気」のように甘美で、しかし虚ろで儚い灯火。

ある日突然、彼女はいなくなった。
振り返っても、どこにもその姿は見えない。
けれど庭に咲く菊の花に目をやったとき、不意に気づく――彼女は花になってそこにいるのだと。静かに佇むその姿は、別れと再生の物語を語り、永遠に残る記憶となる。

桜の花は咲き誇ると同時に散ることを運命づけられた花。
その舞い散る姿には儚さと同時に、不吉さすら漂う。
淡い花びらが舞う空気の中、ペストマスクを纏った影が浮かぶ。
生と死、希望と絶望が交差する一瞬。
桜はただ美しいだけの花ではなく、終焉を予感させる存在でもある。

椿

艶やかな椿は、そのあまりの美しさゆえに、地に落ちたときの衝撃が一層強い。
美しいものは汚れる。
美しいからこそ、散り方までも残酷である。
花ごと落ちる椿は、まるでその命が断ち切られたように見え、だからこそ人の心を惹きつける。
美と死が背中合わせにある花。

藤の花

長く垂れ下がる藤は、どこか永遠を思わせる。
「不死身の花」と呼ばれるように、その姿はいつまでも途絶えず、紫の影を揺らし続ける。
だが同時に、藤は毒にも薬にもなる存在。
その香りや佇まいに酔えば、救われるか、あるいは蝕まれるか。
人を惑わせる両義の花。

彼岸花

燃えるように咲き誇る彼岸花。
その赤は血のように鮮やかで、道標のように並ぶ姿は
「ここから先は渡ってはいけない」
と語りかける。
彼岸と此岸を分かつ花であり、いったんその境を越えれば、二度と戻ることはできない。
美しくも恐ろしい、境界に咲く禁断の花。

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